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残酷!音楽怪獣プログレ

しがないプログレ好きで、よく中古盤を漁っています。ときどきライブなんぞにも行っておりやす。

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パイロット「パイロット・プレイズ・アラン・パーソンズ・プロジェクト」


14年作。英パイロットは『マジック』のヒットを持つポップ・バンドだが、何故かメンバーは矢鱈とプログレ系のバイトに縁がある。特にアラン・パーソンズ・プロジェクトには、プロデューサーだった関係からかほぼ全員が何らかの形で参加しており、ここからキャメルやリック・ウェイクマン等の人脈に広がって行くんである。さて、そのパイロットの新作は関係性の深いAPPの再録音集。APPは実質、夭折したエリック・ウルフソンの色が濃いバンドであり、その意味では少し遅れて来たウルフソンの追悼盤、と解したほうが解りやすいかも知れない。演奏は流石にベテラン・バンド、シングル・ヒットしたヴォーカル曲を中心に巧みに自分たちの個性を織り交ぜ、安定して聴ける出来になっている。生前のウルフソンにもAPPの曲だけを歌ったソロ・アルバムはあったが、残念ながら自主制作盤に近いためプロデュース・ワークが非常にチープ、現代の耳では余りお勧め出来ないアルバムになってしまっているので、APPのカヴァーではこちらが決定版と言えるかも。何かボブ・ディランとPPMみたいだ。
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ザ・フー「四重人格~ライブ・イン・ロンドン」


14年作。今年に入って突然開催された、ザ・フーの不世出のコンセプト・アルバム、『四重人格』の完全再現ライブ。以前も故ジョン・エントウイッスルの破産を救う為、いきなり再結成した事があったが、今回はロリコン疑惑で大損害を被ったタウンゼントか?何れにせよ、モッズ少年の青春の光と影を描いた大傑作アルバム、オーケストラやブラスの追加はあるが、敢えて大きな変更を加えずスタジオ盤を忠実に再現していく演奏。ロジャー・ダルトリーもここ数年、ヴォーカルはかなり復調しており、年齢を考えれば御の字だろう。ラストは『無法の世界』等代表曲を追加演奏。何か新しい発見があるか、と云うと難しいが、もうこれは歌舞伎の大物の新春興行、ご存知の演目を危なげなく務めまする、と言ったレベルの問題。来年は日本にもツアーで来るみたいだし、二人共元気そうだからそれで良いじゃあないか。

カメレオン「ライジング」


14年発表。米テキサス出身のカメレオンは73~78年まで活動し、ディールが得られなかった不遇のアメリカン・ハード・プログレ・バンド。これはメジャー・レーベルへの応募用とかで作成された一連のデモ・テープを、一枚のCDに纏めたもの。一曲目からいきなり「ド」が付くほどのイエスっぷり、ヴォーカルはアメリカン・ロック風だがリズム・セクションのベースのゴリゴリ感、キーボードのトニー・ケイっぷりは恐らく同時期のスターキャッスルを越えている。恐らく本家イエスの『俺達にはチャンスも経験もいらない』が元ネタだろうけど、『こわれもの』以前のイエス・フォロワーと云うのはなかなか渋くて宜しい。恐らくオーディション用の為、その後はツェッペリン『移民の歌』風、クイーン『オペラ座の夜』風、マハビシュヌ・オーケストラばりのバカテク・インスト、とバラエティ豊かな楽曲が続き、かなり器用な連中であった事は判るのだが、一枚のアルバムとしては聴きにくく、まるでアル・ヤンコビックのパロディ作品でも聴いている気分になってしまう。あくまで背景を理解して夭折した作家の作品、を想定して聴くべきなんでしょうね。

バーニン・レッド・アイバンホー「カナル・トリップ~アンソロジー1969~74」


13年発表。バーニン・レッド・アイバンホーはデンマークのジャズ・ロック・バンド。後に英ソフト・マシーン・フォロワーのバンド、シークレット・オイスターに発展していく。メジャーからは4枚のアルバムを出しているが、オリジナル盤は14年現在ほぼ廃盤。唯一生き残っているのがこの2枚組アンソロジー、4枚のアルバムからの代表曲を系列順に並べリマスタリングを施した優れもの。ジミ・ヘンドリックス等のアート・ロックの影響を受けた最初期から、中期フロイド、ホークウインド系の浮遊感が心地よいサイケデリック・プログへ、やがてシークレット・オイスターに通じるフリー・ジャズのイディオムを使ったジャズ・ロック・バンドへと変貌していく過程が手際良く揃えられ、製作者のバンドへの理解度の高さを感じさせられる。70年代サイケ、及びソフト・マシーンのファンは必聴盤。

ジェネシス「BBCセッションズ 1972」


14年発表。仏オン・ジ・エアー・レーベル、ジェネシス放送用音源の第二弾。『怪奇骨董音楽箱』『フォックストロット』期のもので、ようやくスティーブ・ハケット(g)、フィル・コリンズ(ds)の個性が発揮されていく胎動期、特に感覚派だったフィリップスに比べ、確かなテクニックを持ったハケットの加入はギター・ワークで大きな効果を生み、結果的にバンドの演奏を一段階上のものに押し上げている。実は英国プログ・5大バンドは「成長の過程を椎体検するのが一番面白い」と云う説もあり、このアルバムもその側面から聴くべきもの、スタジオ盤のサブ・テキストとしての鑑賞をお勧めする。内容は時期的には「トップ・ギア」等3つの録音+1曲のオーディエンス録音から成り、それぞれの音質にはバラつきもあるが、このシリーズ、とりあえず出し続けていてくれる所を評価したい。次は73年『月影の騎士』期か?!

ジェネシス「BBCセッションズ 1970~71」


14年発表。放送用音源を著作権法の網を潜り抜け、コンスタントに発売しているプログレ界のエスピオナージュ、仏オン・ジ・エアー・レーベルから遂にジェネシス発売。第一弾は70~71年『侵入』『怪奇骨董音楽箱』期。前半はアンソニー・フィリップス(g)、トニー・メイヒュー(ds)在籍時のもので、『侵入』の楽曲を中心にラジオ・ライブなのでコンパクトな構成で展開、初期ジェネシスらしい文学的な歌詞世界と目まぐるしく変わる転調で攻める、独自世界が繰り広げられる。後半はスティーブ・ハケット(g)、フィル・コリンズ(ds)加入後のもので、ジャケ写もこの時期のもの。前任者のコピーに追われ、数年後の個性的な演奏は未だ発揮されていない。初々しいとも言えなくもないが・・・。BBC音源は音質良好だが、後半のライブ・テイクは当時のオーディエンス録音の為、劣悪。貴重なものだが、少し聴き辛いかもね。

イエス「ヘブン・アンド・アース」


14年作。ジョン・デイヴィソン(Vo)加盟後、初のスタジオ盤がようやっと発売。没になった70年代後期の「パリス・セッション」以来、久々のロイ・トーマス・ベイカーがプロデュース・・なのだが、またもや最終段階で意見が一致せず、ミックスは急遽呼び出されたビリー・シャーウッドが担当。近年のシャーウッドのプロデュース作品と同じく、デジタル的で陰影のない(悪く言えばスカスカの^^;。)音像になっているが、この辺は好みの問題か。内容はデイヴィソン+ハウがメインの作曲チームとして頑張りを見せ、ダウンズが大作でサポートする構図のなかなかの力作。地味だがポップな佳曲が並ぶ『トーマト』辺りのイメージが最も近いか。何れにせよ、イエスは実はクリムゾンよりも毎回「変えて来る」バンドであるので、今回も毀誉褒貶があるだろう。♬おぉ~きなノッポの古時計~♬

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