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残酷!音楽怪獣プログレ

しがないプログレ好きで、よく中古盤を漁っています。ときどきライブなんぞにも行っておりやす。

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エルトン・ディーン「奇跡」


07年作。エルトン・ディーン(sax)の遺作、国内盤SHM-CDにて再発。ソフト・マシーンをリスペクトするジャズ・ロック・ユニット、ザ・ロング・オブジェクトをバックに従えての共演。『セブン・フォー・リー』『ベイカーズ・トリート』の代表曲が2曲、奇しくもファースト・ソロの変奏曲『バショー・バリエーション』、残りはオブジェクトのリーダー、ミシェル・デルヴィル(g、Vo)のペンになる楽曲、の構成。衰えを見せぬディーンのハード・ブロウイングに、後進の若手が細やかなサポートを見せるクール・ジャズ・ロックの逸品の一枚で、返す返すも心臓病によるディーンの急逝が惜しまれる。ホッパーやアレックス・マクガイアを従えてのオブジェクトとの共演も聴きたかった・・(;_;)。なお、キース・ティペット(p)にも同時期に追悼盤があるが、こちらはいつものピアノ・インプロ大会で、特にディーンの曲は演奏していない。
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エイジア「ハイ・ヴォルテージ・ライブ 2010」


14年発表。2010年のハイ・ヴォルテージ野外フェスに出場時のライブ、映像ソフト付きで新装発売。以前にコンサート・ライブ社からPA直結音源のオフィシャル・ブートレグが出ていたが、今回はきちんとリマスタリングされ、現エイジアのプロモート先である伊フロンティアーズ・レーベルからの再発。『オメガ』ツアーと同時期であり、この頃のライブは新譜を中心とした曲順で構成されていたが、今回はスペシャル・ライブと云う事でファーストの曲が中心、『オメガ』からは『アイ・ビリーブ』のみ。持ち時間が60分強のため、いつものソロ・タイムは無し。また、この時期はスティーブ・ハウの健康に問題があったのか、出来不出来の波が日によって激しいが、この日はハウも割りと好調、安定した演奏を繰り広げている。次回は『XXX』ツアー時の音源の商品化か?

クリア・フレイム「透明な枠組み」


07年作。前項のホッパーのソロ・ラスト作の発展形が恐らくこのバンド。実質はチャールズ・ヘイワード(ds)のリーダー作となっている。メンバーはホッパー、ヘイワードの他にはロル・コックスヒル(sax)、英国新感覚ジャズ派のオーフィー・ロビンソン(Vibrahone他)、特別ゲストにロバート・ワイアット(Cornet)。ややオーソドックスなフリー要素を混じえたコンテンポラリー・ジャズ作品だが、むしろ主な活躍場はジャズ・フュージョンのフィールドであり、バンドは何度かジャズ・フェス等でライブを執り行っている。恐らくホッパーが存命だとすればこのバンドとソフト・マシーン・レガシーに参加してツアー活動、合間にリスペクトして来る若手アヴァン・ロック・バンドとのコラボ、またその合間にループ・ミュージックを多用したソロ作品、と相変わらず八面六臂の活躍をしていたであろう事は想像に難くない。レガシーのベースの座は後期マシーンに在籍したロイ・バビントンが引き継いだが、前衛ロックの最先端派としての位置は、未だ誰も引き継げずに空席のままである。

ヒュー・ホッパー「第一章(ラスト・アルバム)」


07年作。夏はカンタベリー。ソフト・マシーン・レガシーを始めとする英ムーンジューン・レーベルの諸作品、新規リマスタリング+SHM-CDで国内盤再発。故ヒュー・ホッパー(b)の生前ラスト・ソロ作も目出度く国内盤が初発売された。ジャズ・ロックと云うよりは、どちらかと言うとコンテンポラリー・ジャズ寄りの作品で、メンバーはイン・カフーツ関連のサイモン・ピカード(Sax)、スティーブ・フランクリン(Key)、クワイエット・サン等に在籍のチャールズ・ヘイワード(ds)。録音は02年に行われたもの、との生前のホッパーの証言もあり、この共演がヘイワードのリーダー・バンド、クリア・フレイムへと発展していったのは想像に難くない。(実際このアルバムとクリア・フレイムの音楽性はかなり近似値である。)後半のフランクリンの鍵盤は初期マシーンを思わせる節もあり、若しかしたら原典への回帰、なんて展開があったかも知れないと想像してしまう。改めてホッパーの才能の夭折が惜しまれる、そんな作品。

ケヴィン・エアーズ・アンド・ザ・ホール・ワールド「ハイド・パーク・フリー・コンサート1970」


70年作。故ケヴィン・エアーズ(Vo,g)の70年ライブ、リール・レコーディングス社から発売。『おもちゃの歓び』『月に撃つ』の2作のソロ、ソフト・マシーンの初期楽曲から2曲を演奏。この前後に招集されたバック・バンド、ザ・ホール・ワールドのメンバーが物凄く、王立音楽院卒のオーケストラ指揮者・デヴィッド・ベッドフォード(Key,Synth),前項にも書いたロル・コックスヒル(Sax)、後のチューブラー・ベルザー、マイク・オールドフィールド(b,g)、元マシーンの同僚ロバート・ワイアット(ds)。お陰で「明るいシド・バレット」とも言える内省的な楽曲が全て大インプロヴァイゼーション大会に!とにかく変な連中集めて、化学変化を起こして見よう、と云うのはフリー・ジャズからインスパイアされたとは云え、70年代プログレッシブ・ロックとしては実に健全な行為。「変化の時代」がまだ世の中に対して発信力を持っていたことの証明でもある、ライブ作品。音質は中の下くらい。

G.F.フィッツ・ジェラルド&ロル・コックスヒル「エコーズ・オブ・デューンデン」


07年発表。カンタベリー・ミュージック研究家のマイケル・キング主催、リール・レコーディングス社のアルバムが7枚、国内盤で発売。元々メジャー・レーベルでは出せない、未発表曲集やライブ盤を商品化するのを眼目として発足したレーベル、今回も既に故人となってしまったミュージシャンの作品を中心に、マニアックなラインアップが発表されている。G.F.フィッツ・ジェラルドは60年代にアルバムを残したが、その後はライブでの即興音楽を中心に活躍していた変態性ソングライター。ロル・コックスヒルはカンタベリー周辺で、ジャズとプログレッシブ・ロックのバンドを自由に往来していたフリーキーなサックス奏者。75年にこの二人が共演して、当時所属していたチャーリー・レーベルからも発売中止の憂き目に逢ったのがこの作品。フィッツ・ジェラルドのギター・インストにコックスヒルのサックスが縦横無尽に絡むフリー・インプロヴァイゼーションの長尺物の楽曲が3曲。ジャズと云うより独特の浮遊感漂う、環境音楽作品として聴いた方が良いかもしれません。

ヤマスキ・シンガーズ「ヤマスキの素晴らしき世界」


71年作。世紀の珍盤再発。ダフト・パンクの父親、ダニエル・ヴァンガードが制作した、フランスはパリ製の嘘っぱち・ジャポネ・モンド・ミュージック。全編出鱈目な日本語(風)の歌詞、日本の童謡や70年代フォークをベースにした少年合唱団のコーラス、時々入る如何にもなニュー・ロック・ビート。「奈落の叫びをほじりますから朝飯を取って下さい。ウレシー!!」「あなた~バカな~ダメな~カリメロ~」「ヤ~マ~モト~琴下さい~ボンちゃん掘りますか?」「オニオニオニ~このサムライ~」失語症の人と45分サシで話しているこの掻痒感、筆舌に尽くしがたい。ジンギスカンの『サムライ』の「ウッ、デヤーッ!!」の元ネタはこれかなぁとか、『サンクカイ』『ヤマカシ』とか日本製の映像作品がフランスで変なタイトル付けられるのはこれがオリジンかなぁとか、色々な事を考えさせられる作品です。プログレッシブと云うかモンド・ミュージックの最北端。

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