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残酷!音楽怪獣プログレ

しがないプログレ好きで、よく中古盤を漁っています。ときどきライブなんぞにも行っておりやす。

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ソフト・マシーン「流浪の世界~『収束』ライブ1975」


75年作。マシーンの発掘ライブ、リマスタリングされ国内盤で再発。ジャケ写は英国オリジナル版に変更。CBSからHarvestに移籍、それに伴い、四番打者として大物アラン・ホールズワース(g)が加入。当然音楽性もミニマル・フュージョンだった前作からホールズワースの超絶ギター・ワークを中心に組み立てられた、かっちょいいジャズ・ロック路線に大胆変更。スタジオ盤のタイトル曲『収束』はアランのインプロヴァイゼーションを丹念に追ったバンドの代表作に・・・なったのだがやはり辞めグセのあるホールズワース、アルバムの発売前にトニー・ウイリアムズのバンドに誘われ脱退、この時期の公式盤ライブとしては唯一のものとなっている。ホールズワースはこの後81年の最終作『ランド・オブ・コカイン』で復帰、03年のマシーンの復活プロジェクト、ソフト・ワークスでも再参加しているが、何れも一枚のみの顔出しとなっている。直ぐに辞めるのなら最初から参加しなきゃ良いのに・・・。
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セター・バカン「素晴らしきセター・バカンの世界」


87年作。変人揃いのターキー・プログレの中でも一際英米のサイケデリック・ロック、アシッド・フォーク寄りのソングライター、バカンの代表作が再発。全19曲の中に、ポップス、プログレッシブ・ロック、ディスコ、テクノと考えつく限りの音楽的意匠を取り込み、ターキッシュな民族音楽的な味付けをした印象の作品。中性的なヴォーカルに全編変拍子の嵐の民族音楽ライム、60年代アシッード!なワウ・ギターが鳴り響き、イエスのクリス・スクワイア張りのゴリゴリ感のあるベース・ラインが観客を彼岸の果てへと誘う。まさに「喰ったら死ぬ」闇鍋感のある、極めて辺境の地を思わせる異端のロック。プログレッシブ・ロックが何処まで他のジャンルと融合可能かを実地検証したアルバムであり、ヘンテコ・ロック好きは、必聴盤。

フォックス・キャプチャ・プラン「ウォール」


14年作。「もう一歩間違えるとEL&P」と云うアルバムはジャズ畑の作品に多くあり、例えば上原ひろみのアルバムの幾つかは聴いててプログ・ロックのファンとしては惜しいやら何やら(^_^;)。「ポスト・ロック+ジャズ」がコンセプトのこの若手バンドの三作目も、ピアノ・トリオの編成に流麗なキーボード・ワーク、ジャズ・ロックなリズムが絡むので当然気分はもうウェルカムバックフレンズ、ショーザッツネバーエーンズ。と云うより今回はタイトルも『疾走する閃光』とか、ソッチ方面のリスナーも想定しているフシがある。ビョークやYMOのカヴァーも演奏しているが割りと折り目の正しいジャズで、中間部のアドリブ回しがプログ・ロックのファンとしてはやや萎える気もするし、印象としてはプログと云うよりテクノ系のロバート・マイルズ辺りに近い気もするが、ここは素直にお誘いに乗ってプログ好きも購入してしまうのが吉か。前2作も好盤です。

サイケ奉行「元禄パッション・プレイ」


13年作。想い出波止場の津山篤(Vo,p,Key,Organ,g,Flute)らが中心となって結成された、「時代劇+ブリティッシュ・ロックの融合」がテーマのバカテク・サイケデリック・ロック・バンドの二作目。今回は『忠臣蔵』とジェスロ・タルの『パッション・プレイ』のコラボレーションと云う出オチスレスレの企画盤。殿様キングス・クリムゾン等と一緒に「面白プログレ」のカテゴリーに入れちゃっても良いと思うが、イアン・アンダーソンっぷりを発揮して八面六臂の活躍を見せる津山の好演奏、そこらの若手プログ・ロック・バンドが束になっても敵わないテクニカルなリズム・セクション等、これに「鮒じゃ鮒じゃ、鮒ざむらいじゃ」「殿中でござる」等お馴染みの台詞が歌詞で出て来るお茶漬け+ポトフ状態。当然リスナーが呆然とする顔を想定して作られている訳で、ここは術中に嵌ってボーゼンとして聴くのが正しい鑑賞法。しかし何故ジャケは『ジェラルドの素晴らしき世界』?

クリス・ブレイド「フィフティ・ダラー・プラネット・アンド・トゥエンティ・セント・スターズ」


14年作。ジェフ・ダウンズとのユニット「DBA」やトレヴァー・ホーンとのコラボで活躍中の、米ソングライター/プロデューサーの最新ソロが発売。90年代からの本人のソロとしては4枚目。この人の作品の傾向としては、最新の録音技術を使った「今の音」のアルバムなのだが演っているのは70年代のサイケデリック・ロック、ハード・ロックへのリスペクト溢れる楽曲、と云う所で、その辺がダウンズ辺りの作曲の距離感と近いのかもしれない。但し曲調はむしろサザン・ロック的なアメリカンな大味なものが多く、この辺が英国的な憂いのあるプログ・ロックのファンからすると評価が別れるだろう。アルバムとしてはかっちり作ってあって、及第点。

ヒュー・ホッパー「メモリーズ Vol.1」


14年発表。ゴンゾ・マルチメディア社から、故ヒュー・ホッパーの未発表作品集・全10巻(!)のリリースが発表された。毎月1枚、14年7月から毎月刊行予定。監修はカナダのカンタベリー研究家、斯界の雄マイケル・キング。大丈夫かなぁ、ちゃんと全部出してくれるんだろうか・・・^^;。まずは69年~04年の活動の中からのアンソロジー。以降はソフト・マシーン、エルトン・ディーン、フィル・ミラー、ピップ・パイル、パトリシア・メイヤー等共演者別に刊行の予定。第1巻にはマイケル・キング、実弟ブライアン・ホッパーによる詳細な解説付きで、ホッパーに付いて書かれた文章は少ないのでこれだけでも値段分の価値はある。特にキングの解説はホッパーの音楽を「禅」に例えており、ファズ・ベースを使用した特徴的なベース・サウンド、テープ・ループを60年代から使用しているテクノ的な前衛性、ミンガス/モンク/コールマン等を好んで聴いていた嗜好性によるジャズ・インプロヴァイザーとしての優秀性、等を解りやすく纏めており、ホッパー初心者にも推奨出来る名文を掲載。カンタベリー・マニアは買い逃がさず、ちゃんと全巻発売させよう!

ロケット・サイエンティスト「スーパーナチュラル・ハイウェイズ」


14年作。現エイジアFJPのキーボード担当、エリック・ノーランダーのラナ・レーンに続くハウス・バンド、米ロケット・サイエンティストの新譜が発売。ラナ・レーンが奥方のヴォーカルを生かしたハード・プログレ・バンドなのに対し、こちらは70年代をリスペクトしたシンフォニック・インスト・バンド。スタジオ盤としては96年から6枚目。今回は23分の長尺物+ジョン・バリーの『女王陛下の007』のプログ・アレンジ・バージョン、と云うミニ・アルバム形式。ほぼ20年現役のベテラン・バンドなので、リック・ウェイクマンやエマーソン、ジョン・ロードすら思わせる鍵盤大会を主軸とした、安心の出来となっている。ノーランダーはこのロケット・サイエンティスト、ラナ・レーン、エイジアFJP以外にも個人名義のソロ・アルバムも多数発表しており、少し仕事し過ぎ。且つ購買層をはっきりさせたアルバムの製作方法はプログレを「商品」として扱い過ぎとの批判もあるが、むしろマーケティングを見据えた作品造りは今の時代には合っている気もする。後は乱作気味で似た様なアルバムが続くのをどうにかして欲しいなぁ。

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プログレは楽しい。プログレは、音楽ジャンルではなく、新たな人生の思考法だ(=^・・^=)

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