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残酷!音楽怪獣プログレ

しがないプログレ好きで、よく中古盤を漁っています。ときどきライブなんぞにも行っておりやす。

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ルボシュ・フィシェル「モルギアナ&火葬人」


14年発表。変なホラー映画のサントラをモンド・ラウンジと云うオシャレ系の単語を隠れ蓑に、延々と出し続けるファインダーズ・キーパーズ・レーベル。きっと会社には「お客様のこんな映画知らないっ!と云う呆れ顔が何よりの励みになります」とデカい社訓がゴシック体で貼ってあるに違いない。今回はチェコのユライ・ヘルツ監督の『モルギアナ(73年)』と『火葬人(90年)』のサントラ登場。金持ち姉妹の、家族だからこそ許せない面がエスカレートし、次第に血の惨劇を生むわたなべまさこ名作集的な展開の『モルギアナ』、火葬場で働く殺人鬼が人間を生きたまま焼いたりする『火葬人』、両作ともストーリーは単純ながらフェリーニやマリオ・バーバ的なシュールな映像展開が全編に眩してあり、結果的によく判らない映画になっているが、これをゲージツと見れるかどうかで評価が分かれるだろう。音楽もヘン、ハープやフルートの入る室内楽にテープ・コラージュやリズム・マシーンが入り、変わった事やりゃ良いってもんじゃあない。輸入盤で800円位なので話のネタには買っといて良いかもね。
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アレックス・マグワイア・セクステット「ブリュード・イン・ベルギー」


07年作。新生ハットフィールド・アンド・ザ・ノース等に参加のアレックス・マグワイア(Key,p,Synth)のファースト・リーダー・アルバム。ハワード・ライリー門下で、カンタベリーのジャズ部門を旧ソフト・マシーン一派と共に担うマグワイアだが、今回はやはり故エルトン・ディーンとの共演があるベルギーのジャズ・ロック・バンド、ロング・オブジェクトをバックに従えてのライブ盤。前年にマグワイアが生前のディーンと共演した『サイキック・ウォーリアーズ』からも数曲演奏されており、図らずも共演経験のある若手同士の追悼ライブとなっている。当然メンツ的に演奏内容はプログではなくコンテンポラリー・ジャズ、プログ・ファンが普段聴くタイプの音楽ではないが、内容の良さにカンタベリー系のムーンジューン・レーベルが感嘆し、音盤化する気がなかったマグワイアを口説き落として商品化しただけあって、ジャンルを超えた力強い演奏は一聴の価値がある。ソフト・マシーンのファンは是非。

タンジェリン・ドリーム「GTA5」


14年作。タンジェリン初のゲーム・サントラは、米ロックスター・ゲームス社の怪物ソフト『GTA5』。オープン・ワールド系のカー・ゲームで、複数のチームに別れてミッションを実行していく。(しなくて遊んでても良い(^_^;)。)これが意外と良い出来。最近サントラ仕事が少なく新鮮だったのか、アウトロー系の格好良いBGMが並び、『ザ・クラッカー』の例もある様に、タンジェリンとアクション映画はかなり相性が良いのかも知れない。現在のアクション「映画」の方は、音楽はハンス・ジマー系統のオーケストラぶん回し系が主流になって幾星霜、大型シネコンに合う効果音の一つとなり、メロディらしいメロディが無くなってしまっているが、これは当然全ての演奏がシンセ。80年代のB級アクションらしい味があって、しかも古臭く聴こえず「今のシンセの音」になっているのが良い。リジェクト・スコアもある様なので、未発表曲も含めたパートⅡも希望したい。

タンジェリン・ドリーム「歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族」


14年作。タンジェリン・ドリームの新作、今回は現在欧州ツアー中の『フェードラ・フェアウェル・ツアー』用のスペシャル・シングルだが、ライブ会場以外にタンジェリンのウェブサイト上でも購入可能。因みに発注したらドイツから4日間で自宅に到着(!)何だこのサポートの良さは(^_^;)。フランツ・カフカの短編をコンセプトにした「ソニック・ポエム」シリーズの新作でもある。シングルと言っても全5曲で約40分、昔なら普通にLPで発売してる長さ。前作の『シャンドラ・パートⅡ』が凡庸な出来だったのに比べ、今回は曲のイメージもバラエティに富み、当然タイトル曲は「歌姫」のヴォーカル入り。これはタンジェリンと言うよりクラウス・シュルツみたい。オペラやクラシックの古典楽曲を楽々とインスパイア出来るのは、ドイツ人の強みだなぁ、てな気がしてくる。すぐに品薄になりそうだけど、何れベスト盤の『ブースター』に収録されそうな気も・・・。

ベン「ベン」



71年作。英ヴァーティゴ・レーベルから出た、謎のクール・ジャズ・ロック・バンド、と云うのが国内のプログ・ファンの評価だったが、今回リマスター+新解説付きで再発され、ようやくカンタベリー・ミュージックの一派だと判明した。メンバーのデイブ・シーン(ds)が後年ソフト・ヘッドにツアー・メンバーで参加しているので、取っ掛かりはあったのだが・・。内容はソフト・マシーン中期とハットフィールド・アンド・ザ・ノースの中間色、と云う感じ。これ以上ジャズに傾倒するとフリー・ジャズになってしまうし、フルートやサックスがもう少し活躍すると幻想派のプログレになってしまう。このウネウネした綱渡りの感じこそがカンタベリー一派の真骨頂であり独自色。この時代、音楽も人生も単色ではいられない、と云う疑問提示があった筈なのだが、その答えは何処に行ってしまったのだろうか。

カーブド・エアー「BBC ライブ・イン・コンサート・1971プラス」


14年発表。仏オン・ジ・エアー・レーベルから、カーブド・エアーのBBCセッション集も発売。とは言っても、あれ?数年前にBBC公式盤が出ているぞ・・?と云う事で、今回は前回の商品から漏れたセッションに独ビート・クラブ出演時の既出音源を混ぜた落ち穂拾い的な内容。いきなり回転数が違ってるんじゃねぇかってスピードのよれよれ『イット・ハプンド・トゥデイ』から始まり、既に3曲目で声が出なくなるソーニャ嬢、録音の状態かも知れないが途中の難しい箇所をすっ飛ばす『ヴィヴァルディ』など、前回の製品に未収録な理由がモロ分かりな内容。カーブド・エアーは本来、『ギターとヴァイオリンのパート分けが無いので演奏がカブる』『ソーニャ・クリスティーナがヴォーカリストとして結構ムラのある人』『ダリル・ウェイのソロがクラシックモロ出しで芸がない』とライブは割りと瑕疵のあるバンドなので、ダメな日の演奏、と割りきって聴くべきか。こんなんたまにはありますね。後半の独放送用音源は長尺物もコンパクトに纏めていて、こちらはまぁまぁまとも。

アルイエン・アンソニー・ルカッセン(エイリオン)「時の探求者」


95年作。質の高いコンセプト・アルバムを年々発表している、オランダのプログレッシブ・アーティスト、アルイエン・アンソニー・リカッセン(Key,g他)のファースト・アルバム。近年は英米のプログ・ミュージシャンを贅沢に使い、大作化しているが、まだこの頃は同国人のメタル系アーティストを招いて制作しているのでそこまでの派手さはない。また、この頃は本名名義だが、以降のアルバムは今回のユニット名の「エイリオン」として発表してされている。内容は魔術師マーリンを探訪するタイム・トラベラーの活躍を描いたロック・オペラ・アルバム。音的には後発の様にゲストが少ない為、比較的まとまっており、一番の傑作と云う声もある。リック・ウェイクマン的、スティーブ・ハケット的に流れる展開だが、センスが良いので二番煎じ感は無い。今の時代に、真面目に「プログレッシブ・ロック」に向かい合っている優等生の作品、と云う感じがするねぇ。

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