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残酷!音楽怪獣プログレ

しがないプログレ好きで、よく中古盤を漁っています。ときどきライブなんぞにも行っておりやす。

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PFM「ア・ゴースト」


15年発表。もしもPFMがマンティコア・レーベルと契約しなければ、イタリアン・プログの豊穣な世界はこれほど人口に膾炙せず、狭い世界で終わっていたに違いない。彼らの活躍によって、バンコ、オザンナ、アレア、その他幾百ものプログ・バンドは日本でも未だに熱狂的に(一部の人に)受け入れられている。長年聴いてきて思うのは、英国プログとイタリアン・プログは全く別の拡がりを持つもの、生物学的に云うなら「プログ」目「イングリッシュ・プログ」種と「プログ」目「イタリアン・プログ」種、位の違い、蛇と蜥蜴ほど違うものと考えた方が判りやすいのではなかろうか。マンティコア(合成獣)だから一緒だよ、とか下らない事を言わない様に(^_^;)。そのPFM、昨年の日本公演でのアルバム全曲演奏シリーズを全5枚のCDに分けて商品化、その世界進出の端緒となった『幻の映像』の完全再現ライブ。オリジナル・メンバーは三人となってしまったが、サポート・メンバーを交えての演奏は現役プログ陣で言えばイエス、エイジア等に優るとも劣らない。このシリーズ、他にも『甦る世界』『幻想物語』等も出色の出来、英国プログ・ファンも一枚位購入して見ても損はしないかも。
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カヤック「ザ・ゴールデン・イヤーズ・オブ・ダッチ・ポップ・ミュージック」


15年発表。キャメルのアンディ・ラティマー、若しかしたらイエスのクリス・スクワイア並みにスカウトマンとしては有能なのではなかろうか。ピート・バーデンス退社後のキーボードの担当も、ハッピー・ザ・マン、カヤック、ネイサン・マールと、極めて本家キャメルと近しい音楽性を持つバンドからコンバートして来る。80年代前期にトン・シャーペンツィール(Key,Synth)を引き抜いたこのカヤックもオランダのなかなか面白いプログ・ロック・バンド、長尺物も得意としながらニッチ・ポップにも似た親しみやすいメロディ、暖かみを感じる楽曲、全体の印象は異なるがバンドの方向性はつまりほぼ「オランダのキャメル」である。現在もスタジオ盤の新譜を発表している現役バンドだが、これは73年のデビュー時から81年の傑作コンセプト・アルバム『マーリン』までの時期の所謂「シングル・コレクション」。長尺物の多いプログ・バンドはベスト盤がかなり作りにくいのだが、これはシングル盤と云う事でカヤックのポップ・サイドの最良の成果が集めてあり、最初の一枚としては申し分なしの出来と言える。このシリーズ、他にもプログ・バンドとしてはアース・アンド・ファイアーが発売中。

ロンリー・ロボット「プリーズ・カム・ホーム」


15年作。元ジョン・ウエットン・バンドにして現在はイット・バイツのフロント・マンとなった、ジョン・ミッチェル(Vo,g)満を持してのソロ・プロジェクトの発動。バンドとしてツアーの予定もあるらしい。映画『ゼロ・グラヴィティ』の世界にも似た、SF的なコンセプト・アルバムで、彼の在籍したフロスト、アリーナ等ポンプ・ロックのメンバーによるゲストはいるが、基本的にはギター、ヴォーカルのみならず他の殆どの楽器も担当。マルチ・インストゥルメンタル・プレイヤー、プロデューサーとしての顔もしっかり見せており、この辺はビリー・シャーウッドやスティーブ・ウィルソンと共通した雰囲気。今は何でもこなせないとプログレでは食っていけないと云う事か?楽曲は多彩であり、イット・バイツ直結のハード・プログレ調の曲もあれば、シンフォニック・メタル調、ポスト・ロック調の曲も器用に織り交ぜてある。演奏力を魅せるよりも楽曲を聴かせる事に重点を置いており、ハード・プログレと云うよりはメロディック・ロック、パワー・ポップと云うべきか。極めて破綻の無い優等生的な作品であり、その辺を感心するか物足りないと思うかで評価は別れるだろう。現在のシンフォニック・ロック好きには買いかねぇ。

ホークウインド「スペース・リーチュアル・ライブ 2014」


15年発表。安心と信頼の月刊ホークウインド、14年のロンドン公演から新作ライブが発表。70年代の傑作ライブ盤『宇宙遊泳』の完全再現ライブ、と云う文字にすると多少ややこしいもの。CD2枚組、CD2枚+ライブDVD1枚、CD2枚+DVD2枚組の3種類のフォーマットでの発売。バンド・メンバーはデイブ・ブロック(Vo,g)、リチャード・チャドウィック(ds)、ティム・ブレイク(Key,Synth)の旧メンバーにミスター・ディブス(Vo,b)、ニアル・ホーン(b)、デッド・フレッド(Key,Flute)と云う構成、ソフト・マシーン・レガシーのジョン・エサリッジ(g)がゲストで参加。DVDで観ると流石にストリッパーはいないが、複数の仮面を付けたダンサーが演奏中に舞台の内を乱れ飛び、70年代からの大物サイケデリック・ロック・バンドとしての「型」を未だに継承しているのが微笑ましい。ブロックの操るテルミンの怪音が怪しく場内を漂い、原色のライティングがメンバーの演奏をドラッギーに彩る。この2015年に60年代のマーキー・クラブを再現する、ある種のテーマ・パーク・ショウとして観るのも悪くない。次は『絶体絶命』の再現ライブ辺りは如何でしょうか?

エマーソン・レイク&パーマー「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・サウス・アメリカ」


15年発表。ウェルカンバックフレンズエンショーザッネバエーンズ、レディース・エンド・ジェントルメーン、エマスン、レッエンパーマー!また出たEL&Pの発掘音源シリーズ。今回は再結成EL&Pの93年の南米ツアーのサウンドボード音源の登場。4枚組の大ボリュームで4/1、4/5の公演を全てまるっと収録。ディスク4には97年の2度めのツアー音源を抜粋収録。4/1は過去にWooHoo!Live社からダウンロード販売はされていたが公式のCDメディア化は今回がお初。また、他の日程も数曲はライブ・コンピ等に取られていたが、リマスタリングされて公演の全貌をおさめた製品は今回が初となる。4/1、4/5は同一ツアーの為エマーソンのソロ・タイム以外はほぼ同じ曲であり、続けて聴くのは少し疲れる気もするが、そこはクリムゾンのコレクターズ・クラブでも聴いてるつもりで生暖かく見守って頂きたい。(エマーソンは『マーダロック』の曲なんかをまたソロ・タイムでやっている(笑))。クレジットを見ると一応エマーソン公認盤。再結成EL&Pは予定調和の演奏も多くあまり人気が無いが、音質は時代的にも良いものが多く、これはこれで楽しく鑑賞が出来るレベル。まだまだブートレグでも面白いものは多いので、どんどんかっさらって公式盤化して欲しいでごじゃる。

ヒュー・ホッパー「Vol.6 スペシャル・フレンズ」


15年発表。故ヒュー・ホッパー(b)の未発表音源シリーズ、全10巻も後半戦に突入。エキップ・アウト、ショート・ウエィブ等カンタベリー人脈で組んだ仏スムース・ジャズ・ロック・バンドの、周辺作の演奏を収録。三箇所でのライブを合本しており、80年代期のホッパーのライブ・コンピを思わせる構成。まずは94年ベルギーでのライブ、次に91年仏ブリュッセルでのライブ。メンバーはディディエ・マルビエ(Sax,Flute)、フィル・ミラー(g)、ピップ・パイル(ds)にホッパー。エキップ・アウト・ミーツ・イン・カフーツの趣き。最後は95年、再び
仏ブリュッセルでのライブ。メンバーは盟友エルトン・ディーン(Sax)、フィル・ミラー、ガエル・ホワロー(p)、ホッパーにパイル。現在のソフト・マシーン・レガシーにも通じるリラクシンな演奏で、こちらはショート・ウエィブ番外編か。『ミニラブ』『ワングロ・サクソン』等ホッパーのソロから旧曲も演奏(もっとも、ジャズ・フォーマットで相当崩してあるので、最初は何の曲か判らない^^;)。次回はいよいよディーンと組んでのソフト・マシーン周辺作。このままウネウネ・ベースでラストまで突っ走れ!

クリス・ベヤ・アトール「アイ・ヒア・ジ・アース」


14年作。仏シンフォニック・プログの大物、アトールは御多分にもれず現在二つのバンドに分裂している。一つはクリスチャン・ベヤ(ḡ)を中心としたクリス・ベヤ・アトール。過去にアトール名義で来日済。もう一つは今年のアンドレ・ヴァルチェー(Vo)、ジョエル・ジュアン(Key)を中心としたアンドレ・ヴァルチェー・アトール。今年(15年)のヨーロピアン・ロック・フェスに来日するのはアンドレ・ヴァルチェーの方。まだスタジオ盤もライブ盤も発表されていないアンドレ側の実力は未知数だが、ベヤ側のアトールの欠点はバンドとして「プログレ」を演奏出来る程の実力が無い事。前回の来日は『ライブ・イン・ジャパン』として製品化されているが、そこで聴ける演奏はかなり劣化したものである。ベヤは初期のリック・ウェイクマン同様、座長が目立たないと気が済まない人なのか。このスタジオ盤は仏ムゼアから発売された、イリアンと云うアバターもどきが活躍するSFコンセプト・アルバムだが、90年代以降の若手ハード・プログレバンドの様な雑然とした作品で、とても大アトールの名を冠する作品とは思えない。ベヤのソロ作品(まぁ、実質そうなんだが)と思えば許せるレベル。何かアンドレ側の演奏も心になってきたぞ・・・刮目して待て、ユーロ・ロック・フェス?!

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プログレは楽しい。プログレは、音楽ジャンルではなく、新たな人生の思考法だ(=^・・^=)

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