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残酷!音楽怪獣プログレ

しがないプログレ好きで、よく中古盤を漁っています。ときどきライブなんぞにも行っておりやす。

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ルネッサンス「アカデミー・オブ・ミュージック1974」


74年作。ルネッサンスは自分に取って、常に「他の誰かが好きなバンド」だった。大学の新入生の頃、詩人を目指していた先輩が偶然プログレ好きな事が判って、その日はゲイリー・ムーアと組んだグレッグ・レイクの悪口やポップ化したキャメルの変節について数時間語り合った。後日テープを貸して貰ったのが『四季』と『お伽話』。プログレ界隈でも一際幻想的な雰囲気に惹かれたが、自分でレコードは買わなかった。その数年後にたまやら人間椅子が好きなミュージシャン志望の女性と親しくなり、プレゼントされたのが『碧の幻想』。大傑作だと思ったが、やはり「その子の好きなバンド」止まり。冷静に見れば、女性ボーカリストを配したプログレッシブ・ロックとして作品性、演奏ともに一つの「型」の最右翼だと思うのだが、どうしてもフェイバリット・バンドとして語るには気後れが伴う。これはオーケストラ入りの米国公演の発掘ライブで、まさに順風満帆な船出の時期。レベルは高いと思うが、やはり乗りきれない。そう言うバンドの一つや二つ、生きていれば誰でも抱えている、と思うのである今日このごろ。あ、因みに本当に「バンド」の話でなんかの例えじゃないですよ。数年前には、日比谷野音で本物も見た。アニー・ハズラム(Vo,Key)の「大阪のおばちゃん」っぷりが、実に頼もしかったです。
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キース・エマーソン・トリオ「キース・エマーソン・トリオ」


63年作。エマーソンの「少年時代の初録音」はアルバム『エマーソン・プレイズ・エマーソン』に(恐らくシャレで)1曲入っているが、これはエマーソン十代の頃に結成したピアノ・トリオの自主制作盤の奇跡的な復刻版。アナログ盤マニアの偶然の発掘によりエマーソン本人に届けられ、チェリー・レッド社からまさかの発売と相成った。メンバーはエマーソンの他にはゴッドフリー・シェパード(b)、デビッド・キーン(ds)による完全なジャズ・ピアノ・トリオで、全6曲。スタンダード曲やJ・コルトレーンも演奏した『ユー・セイ・ユー・ケア』などを演奏している。後生を知っている耳で聞くと、「あの手癖」がそこかしこに見られるのが微笑ましくも思える。ウェイクマン同様「エマーソンも生まれた時からエマーソン」と言う事か?EL&Pマニア必聴の一枚。何か数年後にはレア盤になりそう。

スリー「ボストン ,88ライブ」


88年作。EL&P番外編、スリーのライブ盤が初発売。EL&パウエルが(やっぱり)メンバー間の不和及びマネージメントの失敗で、初の米ツアー後早速解散。エマーソンは新進気鋭のソングライター/プロデューサーのロバート・ベリー(Vo,b)と組み、これにエイジアが開店休業中のパーマーも合流。新たにゲフィン・レコードと契約し新バンド「3」としてスタジオ盤を発表する。EL&パウエルが「デジタル楽器に対応した音のプログレ」路線だったがイマイチ売れなかったのに対し反省し、今回はベリーの個性に対応しアメリカン・ロックなストレートな曲を用意、「ポップな曲だけを演奏するEL&P」と言う戦略と相成った。ベリーの作曲は、凡庸ではあるが正道ポップ・ロックな路線でこの時代としては悪くはない。しかし、こういった路線をエマーソンが「生かせない」ミュージシャンであるのも確かで、数回の御披露目ライブの後に成功を収めず、スリーは早々に瓦解する。これは恐らくボストン公演のFM録音で、音質は良好。EL&Pの曲を織り交ぜた演奏も、芸達者揃いのため好調で、ライブで徐々に人気を上げて行けばもう少し巧く行った気もするね。

ロジャー・ウォーターズ「ロジャー・ウォーターズ・ザ・ウォール」


15年作。長年続けられて来たウォーターズの『ザ・ウォール』完全再現ツアー。大成功に終わり、その仕上げとしてドキュメンタリー映画が今年公開された。これはそのサントラ盤の位置付け。『ザ・ウォール』の再現ライヴ盤としては、フロイド時代から数えて3作目となる。それぞれのアドバンテージとしては、フロイドのライブ盤がオリジナル・メンバーによる演奏、前回のウォーターズのベルリン盤はチャリティー・ライブであった為、スコーピオンズやシンニード・オコナーによる豪華なゲスト参加、と言う事になるだろう。では今回の盤に関しては?だが、ナイジェル・ゴッドリッチによる現代の再生機器に合わせたマスタリング、だろう。当然これまでの旧作に比べ最も音質が良く、どの楽器音も良質なオーディオ機器で再生すれば粒揃いとなる。内容については語り尽くされた感もあるが、ウォーターズは「僕の作品の中でベスト」と発言しているが最も人口に膾炙した作品である事に間違いない。映像版はまだか?

クラウディオ・シモネッティズ・ゴブリン「サスペリア2~赤い深淵」


15年作。何だ、またサントラの再発か・・と思いきや、なんと現在のクラウディオ・シモネッティズ・ゴブリンによる新録音盤。よく見ないと判らないよ。先にアナログLPも発売されており、しばらくはこの路線で行くらしい。基本的にオリジナルに極めて似せた演奏、但しG・ガスリーニの作曲・演奏した『スクール・アット・ナイト』『ギアナ(この邦題、以前から思っていたが、ヒロイン名の「ジャンナ」だよなぁ・・・)』はカット。代わりに旧デモニア、現在のバンドによるテーマ曲のライブ・バージョン等が入っている。しかしもう我が家には『サスペリア2』名義のCDだけで何枚あるのだろうか。まさに深淵。まぁそれだけ名盤ってことで(笑)。プログ・ファンに関しては、実質EL&Pの様な『ディープ・シャドウズ』がやはり今回も聞きどころか。次回はやはり『シャドー』を含むサントラ再演奏版みたいです。

タリー「シー・オブ・ジョイ」


72年作。タリーはオーストラリア出身のアシッド・フォーク/サイケデリック・ロック・バンド。サーフィンのドキュメント・フィルムの音楽なんてのは、フロイドの『エコーズ』を使った『クリスタル・ボイジャー』なんて例外はあるが、だいたいが『パルプ・フィクション』のBGMみたいなレッツ・ゴー・トリッピンなサーフ・ミュージック、さもなくばビーチ・ボーイズ系の♬サーフィンUSA~♬。ところがこの映画のポール・ウィテグ監督、友人だったことからサントラをタリーに依頼、結果出来上がった音楽は内省的かつアシーッド!な、おサイケなBGMの数々。しかもそれをまんま使用して結果、興行は惨敗で映画は良く言えばカルト・ムーヴィーと化した。外注業者は公私混同して選択しない様にしましょう、または発注はきちんとコンセプトを決めてからやりましょうと言う、悪い見本みたいなモンである。しかしサントラは映画を見なければ70年代アシッド・フォークの傑作。現在まで語り継がれる事となった。万事塞翁が馬って奴かな(違うって)。

イ・リブラ「ザ・ショック」


77年作。リブラのセカンド、リマスタリング+曲数追加で3度めの再発。リブラは73年にブラック・コンテンポラリー色の強いファーストを発表し、米国でもLPが発売された変わり種のイタリアン・ロック・バンドだったが、その後不発。77年に元ゴブリン人脈のカルロ・ペンジーニ(ds)、マウリチオ・グアリーニ(Key)をメンバーに迎え、やはりゴブリンのウォルター・マルティーノ(ds)をゲストに「第2ゴブリン」的な位置付けで、このサントラを手掛ける。映画はホラーの名匠、マリオ・バーヴァ監督の遺作。前夫を秘密裏に殺害し、子連れ再婚を果たした若妻。だが前夫の怨念が息子に取り付き、じわじわと追いつめられていく。結構コワいが公開当時はネタ的に日本の怪談みたいで少し古臭いかな、とも感じた。しかし、JホラーやらPOVやらトーチャー・ポルノやら「何でもあり」になってしまった現在から見れば、また印象が違うかも知れない。リブラの音楽性は本家ゴブリンから比べるとややファンキー、ドロドロした絵作りからは若干浮いており、その辺がメジャー化出来なかった要因かも?

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