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残酷!音楽怪獣プログレ

しがないプログレ好きで、よく中古盤を漁っています。ときどきライブなんぞにも行っておりやす。

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トーノード「Y.S.2013」


ケルト/トラッド・ミュージックが好きな奴なんてのは、プログレ好きに相当数いるのじゃないだろうか。シンフォニックな方向性が似ているし、エンヤ、クラナドなんて大物もいる。フループなんてアイルランドのグループも昔いたし、大体クリムゾンの「風に語りて」なんか、今聴くとモロにケルト/トラッドの影響大だ。ほんで、このケルト音楽の脇道に入って行くと、どの道もそうなのだが、思ったよりも複雑で、錯綜している。
このフランスのケルト・グループ(ここで既に倒錯している)は、一言で云うと、「メタル・クラナド」。アイリッシュな旋律にヘヴィメタルが絡むのか、ヘヴィメタルにケルト風味のメロディーが演奏されているのか、本体はどっちだ。それでもメタリックな演奏+バイオリン+フィドル=シンフォニック・ハード・プログレになってしまう恐るべき方程式。面白い。タイプは違うが20分以上の大作など、イエスの「危機」みたいな瞬間もある。数枚出してるベテランの割りにはCDが余り売ってないけど、iTunesで楽に手に入るよ。


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ザ・フー「トミー」



これと「四重人格」「エンドレス・ワイヤー」辺りは、コンセプト・アルバムだから、このブログに載せちゃっても良いんじゃないかな。実はこのアルバムを聞いたのは、「ザ・ウォール」やら他のコンセプト・アルバムをしこたま聞いた後だったんで、イマイチぴんと来なかった。「四重人格」は映画「さらば青春の光」を見ていたし、まだ理解しやすかったのだが、三重苦のピンボール・ウィザードの物語は、ケン・ラッセルの映画を見てもあまり心に響いて来なかった。良いな、と思ったのは映画のグラフィックの記憶も薄れて、単純に自分のイマジネーションで聞けるようになってからだ。印象的な曲の、ポイント、ポイントでの挟み方が、素晴らしい。「シー・ミー・フィール・ミー」が入って来る瞬間の、何もない空間に、ぽつんと取り残されたような寂寥感が心地良い。「ピンボールの魔術師」の、イントロのギター・ソロの高揚感も実に格好いい♪やはり名盤は名盤だと、再認識した次第。「四重人格」も、その内書くよ。

美狂乱「トラスト・ミー」


アニメ好きが羨ましい。だってなんやかんや言っても、毎年それなりの傑作は出てくるわ、グッズは多いわ、日本に住んでる限り、一生楽しみが途切れないのではないか。最もプログレで毎年「恐怖の頭脳改革」や「原子心母」級の傑作が出て来るようだったら、こんな状況にはなっちょらんのである。
それでもアニメとプログレの相性は昔から宜しく、エマーソンの「幻魔大戦」、難波弘之の「トランスフォーマー」「女神転生」、J・A・シーザーの「少女革命ウテナ」など、サントラの傑作も多い。畑亜貴さんみたいに、超売れっ子のアニメ作詞家になってしまった人もいる。中でも異色なのがこれ、ギャグアニメの音楽に何と美狂乱(=^・^=)(BGMも)
池上遼一のパロディみたいな話に、クリムゾナーなBGMがペケペケ重なって、あぁ何と言うかもう、意外と合っているのにびっくらこく。しかしデメリットは、このアニメを見た後では、全ての美狂乱の音楽が「魁!クロマティ高校」のサントラに聞こえてしまうのだな。嗚呼、パララックス。

ポール・ブリス「ジ・エッジ・オブ・コインシデンス」



ツアー・キーボーディストの立場と言うのは、微妙である。
正規メンバーと言う訳ではないが、ライブでは過去曲を遜色なく弾かなくてはならないし、高い演奏技術を要求され、その割りにはキャリア上のプラスは殆ど無いに等しい。イエスのトム・ブリスリン、キャメルのミッキー・シモンズ辺りはソロも出しているが、買った人、本体のバンドのファンでもあまりいないだろう。
イアン・カットなんて、ネオアコのプロデューサーとして一線の人なのに、何で時々プログレ仕事なんぞやっとるのか。
そんな裏方稼業のソロに共通しているのは、「質が高い」こと。
苦節ウン年で、曲も溜まって外れも少ないので、意外と拾い物が多いんである。
ポール・ブリスは、パトリック・モラーツの後任でムーディー・ブルースのツアーに参加した人で、本来はポール・ブリス・バンドでAORの傑作をモノにしていた人(日本盤も出ている)。
で、ツアー中にほぼ自主制作で発表したのがこのアルバムで、やはり名曲揃いの傑作アルバム。
何でここまで作曲出来る人材をメンバーに昇格させんのや、と思えて来るが、ムーディーズはあの自己主張の塊みたいなモラーツですら一切曲作りに参加させてないだけあって、創業者の役員たちと中途採用の壁が恐ろしく厚いバンドなのでありました。それでも中古なんかで見つけたら即ゲット推奨。良いアルバムだよ、これ。

ドロップシャード「エニウェイ・バット・ホーム」



どこからどこまでのジャンルがプログレなのか、と云う定義は意外にもムズかしい。
70年代のものはある程度分かり易いのだが、それ以降はポンプ、シンフォニック・メタル、アヴァン・ロック、テクノ、果てはフュージョンや民族音楽にまで人材が拡散し、きりがない。
シンフォニー性を求めてファドやブルガリアン・コーラスを聞いたり、ケルト音楽を愛好している人も少なくない筈だ。
なんせiTunesのSymphonic Rockの1位が、MUSEである時代なのだ。
「ジャンルの境界線を取り払い、新しい音楽を作る」のがプログレッシブたる理念であったならば、その理念は2012年の現在、十分に達せられたと言っても良いが、その反面、世界は拡散し、皆が手に取ることが容易ではなくなっている。
そんなら今のプログレッシブって何よ、と云う一つのサンプルが、このアルバム。
2009年デビューのイタリアのバンドで、何だ、ただのメロディック・ロックじゃないの、と言われそうだが、メンバーは「プログレ」だと言っているし、長尺の曲やメロトロンを多用しなくても、この質感は確かに「あの」音楽である。
今の時代、音楽の正体が見えなくても畏れることはない。
ただ進み続ければ良いのだ、と言われているようである。お薦め。2NDが早く出ないかなぁ。

ジョン・グリーブス「オン・ザ・ストリート・ウェア・ユー・リブ」



ヘンリー・カウ、ナショナル・ヘルス等に凄腕ベーシストとして在籍した後、フランスに渡り、アヴァンギャルド・ポップ→異色の捩じくれシャンソン歌手として活躍しているジョン・グリーブス。最高傑作は名曲揃いの「ソングス」と云うのに異論はないが、他のアルバムも独特の趣きがあって、捨てがたい魅力がある。「ケアテイカー」「リトル・ボトル・オブ・ランドリー」なんかも粋なアルバムで好きだが、ジャズのスタンダード・ナンバーを集めたこれもジェントルなアルバムでお薦めです。
「フライミー・トゥ・ザ・ムーン」なんかも、枯れたチェット・ベイカーと云う感じでかっちょいい。来日とかの可能性は、もう限りなく低いが、一度ブルーノート辺りでライブって欲しいものであります。

リック・ウェイクマン「イン・ザ・ニック・オブ・タイム」



ソロ・アルバムを出し続けないと死んでしまう、魔女の呪いを掛けられているとしか思えない、イエスの元キーボーディスト、リック・ウェイクマン。今年は「ブートレグ・ボックスVol.2(5枚組)」と、「アンダーソン&ウェイクマン ライブ Vol.1」だけで、おとなしいなと思っていたところに、届けられた新譜。2003年イングリッシュ・ロック・アンサンブルのライブで、コンセプト・アルバム「アウト・ゼア」を発表した頃なんで、その中の曲もやっている。珍しく、メンバーの詳しいバイオの載った解説書付き。出来はいつもの通り可もなく不可もなくだが、何故2003年のライブを今頃?レーベルのゴンゾ・マルチメディアは、「ウェイクマンのアーカイブ・プロジェクトやるよ!」とかHPで言ってるので、これはその第一弾と云う事なのかなぁ。とりあえず元気で何よりであります。

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