ツアー・キーボーディストの立場と言うのは、微妙である。
正規メンバーと言う訳ではないが、ライブでは過去曲を遜色なく弾かなくてはならないし、高い演奏技術を要求され、その割りにはキャリア上のプラスは殆ど無いに等しい。イエスのトム・ブリスリン、キャメルのミッキー・シモンズ辺りはソロも出しているが、買った人、本体のバンドのファンでもあまりいないだろう。
イアン・カットなんて、ネオアコのプロデューサーとして一線の人なのに、何で時々プログレ仕事なんぞやっとるのか。
そんな裏方稼業のソロに共通しているのは、「質が高い」こと。
苦節ウン年で、曲も溜まって外れも少ないので、意外と拾い物が多いんである。
ポール・ブリスは、パトリック・モラーツの後任でムーディー・ブルースのツアーに参加した人で、本来はポール・ブリス・バンドでAORの傑作をモノにしていた人(日本盤も出ている)。
で、ツアー中にほぼ自主制作で発表したのがこのアルバムで、やはり名曲揃いの傑作アルバム。
何でここまで作曲出来る人材をメンバーに昇格させんのや、と思えて来るが、ムーディーズはあの自己主張の塊みたいなモラーツですら一切曲作りに参加させてないだけあって、創業者の役員たちと中途採用の壁が恐ろしく厚いバンドなのでありました。それでも中古なんかで見つけたら即ゲット推奨。良いアルバムだよ、これ。
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