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残酷!音楽怪獣プログレ

しがないプログレ好きで、よく中古盤を漁っています。ときどきライブなんぞにも行っておりやす。

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V.A「プログ・ロックス!(2013・5枚組ボックス)」


13年発売。英プログ・ロック・マガジンのジェリー・アーウィンが監修する、名作プログレ・コンピレーション・シリーズの最新版が発売された。今回は何と5枚組、レーベル毎に各メーカーのアーティストに分けて作成しているのがポイント。結果的に権利関係が楽になり、代表曲の収録が割りと可能になっている。選ばれたレーベルはハーヴェスト、カリスマ、ヴァージン、リバティ(旧ユナイテッド・アーティスツ)、インサイド・アウト。60年代の黎明期から90年代のネオ・ポンプ・ロックまでを網羅した、まずは妥当な選択。所謂フロイド、クリムゾン・・・等の「5大バンド」はこれらのレーベル外なので当然含まれていないが、重要なクラスのバンドは一通り押さえてあり、現在の所最良の「文学全集」と言えるだろう。今後はテーマ別に「夕暮れに聴くお洒落なプログレ」とか、「リラックス出来るヒーリング・プログレ」とか、色々出してくれれば面白いかも。
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エルトン・ディーン「イントゥ・ザ・ニーリカ」


98年作。こちらは4月に再発。因みにディーンは10代の頃に一緒にやっていたシンガーに請われて芸名を貸して、そいつが後のエルトン・ジョン。このアルバムはマーク・サンダース(b)、ロベルト・ベラタラ(ds)とのトリオで、1曲目はビバップ調だが全3曲でフリー系の大作が残り2曲。音楽雑誌でよく言われる「スポンティニアス」な演奏を繰り広げている。ニーリカってのはメキシコに同名の観光地があるが、ジャケットの本人の解説を読むとニライカナイ、いわゆる「涅槃」らしい。この人、若いころにスウィンギン・ロンドンにどっぷり浸かってた影響なのか、ときどき妙にアシッドな事を言い出す。シド・バレットの追悼盤を出してるだけのことはあるのである。次の再発は『QED』か?

エルトン・ディーン&ポール・ダンモール「イフ・デュボワ・オンリー・ニュウ」


96年作。13年6月と少し先だが、ゴンゾ・マルチメディア社より元ソフト・マシーンのエルトン・ディーン(Sax)のソロも再発が決まった。この人もアルバム数は膨大だが、割りとストレートなフリー・ジャズ、ビバップのアルバムが大半を占めていて、プログレの人と云うよりもむしろジャズ畑の人である。お陰でソフト・マシーンの関連盤まで集めようとすると、この人のアブストラクト且つピーヒャラピーのフリー系のCDまで2~300枚集めなければいけない。ここまで来ると好みの別れる所ではある。このアルバムはやはりフリー系の管楽器奏者、ポール・ダンモールとの2管のみの演奏。心と身体の赴くままにインプロヴァイズしまくっており、アルバート・アイラーとかファラオ・サンダース辺りが好きな人向けである。

冨田勲「恐怖劇場アンバランス~オリジナルBGM集」


06年発売。もしかしたら冨田勲の全作品中で、一番プログレ・ファンにアピールするのはこのCDなのではないか。この69年制作のTVシリーズ、途中で推理モノに方針転換されるが、それまでがとにかく怖い(;_;)。怪奇映画の王道、殺された女の片手が追って来る『墓場から呪いの手』、轢殺された男の死体が犯人の家族(!)をスプラッタする『死体置場の殺人者』。(「幽霊」ではなく交通事故に遭った物理的な「死体」が襲って来るのは『クリープショウ2』より20年早い!因みにリスペクト作として、平山夢明監督のDVDシネマ『人を殺して引き擦って』なんてのもある)映画館で『陽炎座』の併映で掛かったが、何度見ても話が判らない鈴木清順監督の『木乃伊の恋』、前衛劇団の人間関係が「魔」を誘き寄せる唐十郎監督の『仮面の墓場』・・・ネコの鳴き声をサンプリングしたと思しきメイン・テーマ、何よりも怪奇映画+シンセサイザーの組み合わせは、70年代の海外では78年のジョン・カーペンターまで待たねばならず、その先見性は目を見張るものがある。Vol.2も是非希望。

スティーブ・ウィルソン「レイブンは歌わない」


13年作。ポーキュパイン・ツリーの総帥、スティーブ・ウィルソンのソロ三作目。昨今はクリムゾンやEL&Pの再発プロジェクトのエンジニアとしての仕事の方がプログ・ファンには有名だが、本来は初期クリムゾンに影響を受けた生粋のプログ・ミュージシャン。今回は人脈を生かし、メンバーに元エイジアのガスリー・ゴーヴァン(g)、再結成UKのマルコ・ミンネマン(ds),元マイルス・デイビス・バンドのアダム・ホルツマン(Key,Synth)、ソフト・マシーン・レガシーのセオ・トラヴィス(Sax)、エンジニアに大先輩のアラン・パーソンズと云う豪華版。前2作が宅録でセコセコ作ってまっせ、みたいな感があったが、今回はお客さんが多いので各メンバーの見せ場を生かした楽曲が並び、これまでのソロの中では一番出来が良いものとなっている。但し曲調は相変わらずのハード・プログレ版クリムゾンなので、この辺をオールド・ファンがどう捉えるかでしょうね。いつも通り、デモ・バージョンも収録した2枚組限定版も発売。

ニュー・トロルス「コンチェルト・グロッソ No.3」


13年作。ついに出ました『コンチェルト・グロッソ』シリーズパートⅢ!あれ、07年に『コンチェルト・グロッソⅢ~ザ・セブン・シーズンズ』って出してなかったっけ?!よく見たらバンド名が「ラ・レジェンダリア・ニュー・トロルス」。相変わらずイタリアのプログレ・バンドは本家と分家の争いが深刻で、老舗の饅頭屋を思わせて好感が持てる。しかし両方に顔を出しているヴィットリオ・デ・スカルツィ(Vo,g)、お前は一体何なんだ。パートⅢが二つ出来ちゃった訳で映画で云うと『悪魔のいけにえ』みたいである。こちらの売りはオリジナルと同じく、映画音楽作曲家のルイス・バカロフが再び参加している点で、キャッチーな曲が多い。イタリアのラウンジ・サントラ・マニアはとりあえず必聴か?

ピンク・フロイド「光~パーフェクト・ライブ」


88年作。コラム365本目記念、でフロイドだ。DVDが来月初発売らしいが、あれれ、出てなかったっけ。発売元がB級プログレ専門のEagle Visionと云うのも不安だ。きっとリマスターとかしてないんだろうなぁ。CD版も紙ジャケとかでは出ているが、前回のリマスター・プロジェクトからは『Pulse』同様、外されている。『鬱』公演の再結成フロイドのライブ盤で、日本公演もあった事だし、結構思い入れが強いアルバムな人も多いんではないかな。CD1が『鬱』の新曲、CD2がベスト・オブ・フロイドと云う来日公演と同じ展開、何よりもこれ、公式では「初」のフロイドのライブ盤だ。CDもデジタル・リマスタリング、全曲収録の「完全版」を何時の日か希望。

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