プログレと云うのは、基本的には、「黒人音楽の白人音楽の文法による再解釈」なので、純ブラック・ミュージックとは、非常に相性が悪い。今、プログレを聴いている音楽ファンで、ラップやヒップホップも同時に聴いている、と云うひとは余りいないだろう。同時に、プログレと云うのは、様々な音楽ジャンルを取り込んで異形化するキメラでもあるので、時代によっては奇妙な融合作も幾つかはある。
70年台に、ブラス・ロックと云うジャンルがあり、南アフリカ出身のミュージシャン、クリス・マクレガーらが持ち込んだアフリカン・リズムのジャズが英国ロックと邂逅して、と云う誕生の流れ。ジャズ・ロックの一種としても聴け、オシビサ等のバンドがいるが、中でも聴きやすいのがこのデモン・ファズ。
覆面レスラーみたいな恐いジャケで、歌詞も熱い大陸や人種の壁を超えた人々について歌っているが、音的には普通にテクニカルなジャズ・ロックなので、プログレ好きには聴きやすい。傑作なので、割りとお薦め。因みに完全に余談だが、クリス・マクレガーを頼って南アフリカから英国に渡って来たのが、あのトレヴァー・ラビン。その後のイエスの歴史にも関わってくる訳で、この世界の人脈、奥が深い。
PR