15年発表。久々のカンタベリー系の大物発掘音源、謎のバンドWMWSの登場。その正体はロバート・ワイアット(ds)、ゲイリー・ウインド(Sax)、デイブ・マクレエ(Key,Org),リチャード・シンクレア(b)の結成した一夜限りのジャム・セッション・バンド、73年4月に英国ロニー・スコット・クラブでのライブ。45分全1曲のモノラル・カセット録音だが、余り気にならない良質のリマスタリングが施されている。時期で言うとワイアットはマッチング・モールを一時解散させ、次の一手を模索していた所だが、その実験として当時のソフト・マシーンと同じサックス入りのジャズ・フォーマットのバンドを試して見ているのが面白い。マッチング・モールからマクレエ、キャラバンからシンクレアを連れて来ている時点で指向性はだいぶポップ寄りなのだが、ここでのサックスはシリアスなエルトン・ディーンではなくユーモラスなゲイリー・ウインド。テクニカルな演奏の応酬よりもほわっとしたリラクシンな印象、ラスト間際はフリー・ジャズではなくサイケデリックなロック・ジャムと成り果てる。もしもワイアットが事故に遭わず、マッチング・モールの3枚目にこの成果が反映されていたら、とイフの世界を想像してみるのもなかなか面白い物がある。ジャケットはジャズ・ピアニストでもあるゲイリーの未亡人、パム・ウインドのデザインした作品。
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