エイジアの中のジェフ・ダウンズの立ち位置は、「キーボードも弾ける作曲者兼プロデューサー」だと思う。資質としては、キース・エマーソンや坂本龍一と云うよりは、小室哲哉や筒美京平に近い。何のこたぁない、バグルスの二人は解散してからも、お互いに似たような事やってる訳である。逆に、ソロ・アーティストとしてのダウンズの顔は、存外見えにくい。毎回違う事やってるから、てのもあるが、良く言えば彼の才能を持ってすれば簡単だろう、と云うレベルのものが多く、渾身の代表作、みたいな作品が存在しないからである。それともソロ・アルバムと云うのは、彼にとっては余技、と云うかちょっとしたレクレーションみたいなものなんだろうか。
この1STソロは第一期エイジアに在籍中に発表されたもので、コンセプトは「当時最新のシンセである、シンクラヴィアを使用したシンフォニー」。明快である。同時期にエディ・ジョブスンが「テーマ・オブ・シークレッツ」で挑戦し、結局凡庸なヒーリング・ミュージックに落ち着いてしまっているジャンルに対し、さらっと挑戦しさらっと成功している。この「さらっと」と云う部分が、共感を呼べるかどうかで、この作品の評価はかなり変わって来るだろう。
もしかしたら自分の才能に実は一番気付いてないのが、ジェフ・ダウンズ本人なのかもしれない。
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