小説家が、自作を自分で「映画監督」として、映画化する時、失敗に終わる一つのパターンがある。まず、台詞を切れないので、編集が悪く、だらだらとした展開が続く。ストーリーには自信があるが、「絵」として見せる事は素人なので、カメラワークやコマ割りに魅力がない。シーンの一つ一つのショットは良いのだが、繋いで見てみると有機的に繋がらない。ロジャー・ウォーターズのソロ・アルバムは、「全て」この条件に当てはまる。極論を言ってしまえば、音楽的な感動は、皮肉なことに他メンバーのソロ中、最低ランクだと思う。「俺がフロイドだ!」と云う事を証明したい余り、誰の意見にも耳を貸さず、独りよがりな作品になり、結果として、ロジャー≠フロイド、と云う正反対の結論を世間に証明している。とても悲しい話だと思う。このアルバムも、ギターにエリック・クラプトンなんてビッグ・ネームを呼ぶのではなく、アンディ・フェザー・ロウかスノーウィ・ホワイト辺りで我慢して、こじんまりと作っていた方が、ロジャーの私小説的なコンセプト・アルバムの小品、として評価が高かったような気がする。内容が内省的なのにゴージャスに見せようとするから、金をかけた大作映画の失敗作みたいな出来になっているのだ。フロイド・フリークにしかお薦めしない、世紀の失敗作。
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