ケヴィン・エアーズとシド・バレットは、まるでコインの裏表のようだ。
二人共EMI所属、1枚目のアルバムでバンドを辞め、ソロ活動に入る。ジャンルは同じサイケデリック・フォーク。ただ、シドにはドラッグがあったが、ケヴィンには酒と美食と女の子があった。プログレとかサイケとか以前に、基本的にこの人の歌はボヘミアンなのだ。シドがジャン・コクトーかボリス・ヴィアンなら、この人はフランソワ・ヴィヨンかオスカー・ワイルドだ。とっ散らかった歌詞から漂う底抜けの楽天性、この部分を好きになれるかによって、評価は別れると思う。シドはフロイドのファンなら大抵聴いているが、この人はソフト・マシーンやプログレのファンと云うより、ブリティッシュ・ポップ、ニッチ・ポップのファンに人気がある。当然である。この人のイビザ島の陽光が似合いそうなリア充っぷりは、プログレ・ファンにはちょいと眩しすぎる。
「フリー・ジャズやブルースを自分達流に演奏してみたんだ。何か変な物になっちゃったけどね」プログレを「変な物」と言い切るこの男、素敵である。今は自分のレストランで、魚料理の板前をやってるそうだ。
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